誰が科学を殺すのか 科学技術立国「崩壊」の衝撃

毎日新聞社の「誰が科学を殺すのか 科学技術立国「崩壊」の衝撃」を読みました。

電車のなかでは本を読む,と決めているくせに,結局,電車の中でつまらないメール処理に明け暮れてしまって全然本が読めていません。

今日は久しぶりに京都へ行く用事がありました。普段なら新幹線のなかで全力でメール処理をするところですが,昨日と今日は職場の計画停電のため金曜日の夕方からサーバーを落としていました。その結果,職場のサーバーからメールを出すことができないため,週末に来たメールは全て遠慮なく無視をすることにしtて久しぶりに,本当に久しぶりに本を読んだ,というわけです。

この本の内容は毎日新聞に連載されていたもので,毎日新聞の読者としてだいたいは読んでいました。しかし,本にまとめられて全体を改めて読み直すのは良い機会だと考えて読んでみました。

誰が科学を殺すのか 科学技術立国「崩壊」の衝撃 - 毎日新聞「幻の科学技術立国」取材班
誰が科学を殺すのか 科学技術立国「崩壊」の衝撃 - 毎日新聞「幻の科学技術立国」取材班

老眼が進行して電車のなかで本を読むこと自体が苦しくなって来ましたが,京都を往復する間になんとか読み終えることができました。新聞の連載をだいたいは読んでいるので内容は読んだことがあるものですが,章立てを明確にして整理し直されているので全体の理解をするのにはとても有用でした。著者らはタイトルがとても刺激的で読者はびっくりする,ということを想定(あるいは期待)しているようですが,業界の中にいると特に驚くようなことはない,という印象です。本に書かれている内容もある程度良心がある研究者にとってはほぼ常識であって,今更,この程度の内容か?というものです。

ノーベル賞をとる日本人がいっぱいいるので日本はすごい,と勘違いしている国民がどのくらいいるのか私にはわかりませんが,現実は本書に書かれている以上に悲惨です。本書では取材対象は大学の学長レベルのいわゆる「偉い人」が中心で,彼らが現状をどのように理解しているか,ということが紹介されています。末端の研究者の認識はほとんどでてきません。学長ではない人としては,いわゆる「すごい研究者」のコメントは紹介されていますが,ある意味どうでもよいカスみたいな末端で溺れかけている,というかほぼドザエモン状態の研究者の現状はあまりシリアスには記述されていません。

文科省の尻馬に乗って,大学をダメにしている張本人は自称「偉い」学長先生だったりするわけで,そのような人たちのコメントから現実が本当に見えているのか,という疑問を感じます。

毎日新聞が想像している以上に現場の末端は崩壊していますが,もはやそれを誰かに警告してどうにかなるフェーズは完全に通り過ぎていて,もう後戻りできない段階にある,という認識が欠けているのが残念です。このような問題を取り上げたことはマスコミとしてある意味立派なことだと思いますが,残念ながら認識が甘く,現実はすでにどのような手を打っても回復不能なレベルで手遅れ,というところまで踏み込んで欲しかったと思います。

研究者という社会的に役に立たない業界にいる人にとってはほぼ全ての内容が何を今更言っているんだ,という印象が残るだけで何一つ新しい情報は得られません。しかし,研究を生業としない業界に住む人にとっては再起不能なレベルでダメな日本を理解しようと考え始める一助にはなるかもしれません。
posted by MOR at 22:11Comment(0)Books

花咲舞が黙ってない

池井戸潤の「花咲舞が黙ってない」を読みました。

電車のなかで本を読むと決めたわりには,電車のなかで仕事をしてしまって最近はなかなか本がよめていませんでした。パターンはいつも同じですが,半沢直樹シリーズとの繋がりが垣間見えたりして楽しくよむことができました。たまにはこういう本を読んで元気を出さないとダメだと思いました。
posted by MOR at 18:00Comment(0)Books

人はなぜ御用学者になるのか 地震と原発

島村英紀の「人はなぜ御用学者になるのか 地震と原発」を読みました。

島村さんは私のいる業界の人なのでもちろん顔くらいはみたことがあります。世代的には2回り+αくらい上で,ちょうど私の大学時代の指導教員の世代にあたります。この本が出版されたのは2013年で,島村さんは1941年生まれということですから72歳のときに上梓された本,ということになります。この歳になってなお本を書くエネルギーがあるというのは立派なことだと思います。

タイトルに惹かれて思わず買ったのですが,なぜ御用学者になるのか,ということは陽には書かれていませんでした。もちろん,言いたいことはわかるのですが,それはこの業界にいれば誰でも知っていることですし,ちょっと想像力のある人なら本を読むまでもなく当然わかるであろう内容でした。御用学者の心理とかそういう外から見えないところを「御用学者」本人から聞いて深い話が書かれているのではないか,と期待したのですが,そんなことはまったくなくて新聞に書かれている程度の情報でかなり残念な本でした。

島村さんに教えてもらうまでもなく,私には御用学者は掃いて捨てるほどいるのですから実例には事欠きません。御用学者という自覚を持ってやっている人には問題はまったくなくて,御用学者を無意識にやっていてそれが偉いと勘違いしている人が大半です。そういう話を期待した私がアホだったのでしょう。書かれている内容は失礼ながら文字通り年寄りの繰り言で,昔の俺はこんなにすごい研究をしていた,という話が主で結局何がいいたかったのかよくわからない本でした。

島村さんはたくさん本を出されているだけあって,文章も読みやすく,局所的には筋の通った話になっていますが,本全体を通して見ると脈略のない話が並んでいるだけ,という感じでかなりがっかりしました。個々の話題のなかではいいことも書かれていてまったくそのとおりだと思うことも多いのですが,わかっている人には説明不要でわかっていない人にはあまりよくわからない内容で,わざわざ本にして誰に読ませたいのだろう,という印象でした。


posted by MOR at 18:00Comment(0)Books