「指示通り」ができない人たち

日経プレミアシリーズの「「指示通り」ができない人たち」を読みました。

本を読んだのは久しぶりの気がします。前回,Booksカテゴリーで書いたのは2020年の3月でしたので4年半近く本を読んでなかったことになります。かなり重症の本を読まない病になっていたようです。

新聞広告に出ているのを見て読んでみようと思ってジャスコというかイオンへお買い物に行ったついでに本屋に寄って買ってきました。お店の人に探してもらったのですが,コンピュータでは在庫があることになっているのに見つからず,お店の人が2人がかりで探してずいぶん発掘に苦労をしていました。新聞の広告にはたちまち大反響,たちまち重刷みたいなことが書いてありましたが,実際にはあまり本屋で買う人はいないということなのでしょう。

「指示通り」ができない人たち (日経プレミアシリーズ) - 榎本博明
「指示通り」ができない人たち (日経プレミアシリーズ) - 榎本博明

書かれている内容はだいたい想像通りで具体的な事例がたくさん書かれていて,あるある状態でした。私がこれまでの経験から自己流に解釈していたことが大筋では間違っていない,ということもわかりました。メタ認知能力,という言葉を初めて知りましたが,「こういう人たち」は自分を客観視して反省する能力が欠落している,と理解して自分なりに納得をしていましたので,それがメタ認知能力なんだ,ということも確認できました。

解決方法については多少は書かれていますが,いずれも気長に教育をしましょうという話で当然ながら短期間で解決するものではありません。根気が続く気もななかかしてきません。欧米なら「こういう人たち」は即座に解雇だけど日本でそうもいかないので時間をかけて教育するしかない,というようなことが書かれていましたが,実際そのとおりであるにしても,とても雇用者や管理職の立場からすれば辛いことだと思います。そのうえ,私の職場環境ではメタ認知能力を鍛えるだけの物理的な時間がないことが普通なので手の施しようがない,ということになってしまいます。

この本は,それほど文字が多いわけでもないので半日もあれば読み終わってしまいます。短期的な問題解決にはあまり役立たないかもしれませんが,自分の現状に対する理解を確認するのにはとても役に立ちましたし,今後どのようにすべきかを改めて考える機会になってよかったと思います。

誰が科学を殺すのか 科学技術立国「崩壊」の衝撃

毎日新聞社の「誰が科学を殺すのか 科学技術立国「崩壊」の衝撃」を読みました。

電車のなかでは本を読む,と決めているくせに,結局,電車の中でつまらないメール処理に明け暮れてしまって全然本が読めていません。

今日は久しぶりに京都へ行く用事がありました。普段なら新幹線のなかで全力でメール処理をするところですが,昨日と今日は職場の計画停電のため金曜日の夕方からサーバーを落としていました。その結果,職場のサーバーからメールを出すことができないため,週末に来たメールは全て遠慮なく無視をすることにしtて久しぶりに,本当に久しぶりに本を読んだ,というわけです。

この本の内容は毎日新聞に連載されていたもので,毎日新聞の読者としてだいたいは読んでいました。しかし,本にまとめられて全体を改めて読み直すのは良い機会だと考えて読んでみました。

誰が科学を殺すのか 科学技術立国「崩壊」の衝撃 - 毎日新聞「幻の科学技術立国」取材班
誰が科学を殺すのか 科学技術立国「崩壊」の衝撃 - 毎日新聞「幻の科学技術立国」取材班

老眼が進行して電車のなかで本を読むこと自体が苦しくなって来ましたが,京都を往復する間になんとか読み終えることができました。新聞の連載をだいたいは読んでいるので内容は読んだことがあるものですが,章立てを明確にして整理し直されているので全体の理解をするのにはとても有用でした。著者らはタイトルがとても刺激的で読者はびっくりする,ということを想定(あるいは期待)しているようですが,業界の中にいると特に驚くようなことはない,という印象です。本に書かれている内容もある程度良心がある研究者にとってはほぼ常識であって,今更,この程度の内容か?というものです。

ノーベル賞をとる日本人がいっぱいいるので日本はすごい,と勘違いしている国民がどのくらいいるのか私にはわかりませんが,現実は本書に書かれている以上に悲惨です。本書では取材対象は大学の学長レベルのいわゆる「偉い人」が中心で,彼らが現状をどのように理解しているか,ということが紹介されています。末端の研究者の認識はほとんどでてきません。学長ではない人としては,いわゆる「すごい研究者」のコメントは紹介されていますが,ある意味どうでもよいカスみたいな末端で溺れかけている,というかほぼドザエモン状態の研究者の現状はあまりシリアスには記述されていません。

文科省の尻馬に乗って,大学をダメにしている張本人は自称「偉い」学長先生だったりするわけで,そのような人たちのコメントから現実が本当に見えているのか,という疑問を感じます。

毎日新聞が想像している以上に現場の末端は崩壊していますが,もはやそれを誰かに警告してどうにかなるフェーズは完全に通り過ぎていて,もう後戻りできない段階にある,という認識が欠けているのが残念です。このような問題を取り上げたことはマスコミとしてある意味立派なことだと思いますが,残念ながら認識が甘く,現実はすでにどのような手を打っても回復不能なレベルで手遅れ,というところまで踏み込んで欲しかったと思います。

研究者という社会的に役に立たない業界にいる人にとってはほぼ全ての内容が何を今更言っているんだ,という印象が残るだけで何一つ新しい情報は得られません。しかし,研究を生業としない業界に住む人にとっては再起不能なレベルでダメな日本を理解しようと考え始める一助にはなるかもしれません。

花咲舞が黙ってない

池井戸潤の「花咲舞が黙ってない」を読みました。

電車のなかで本を読むと決めたわりには,電車のなかで仕事をしてしまって最近はなかなか本がよめていませんでした。パターンはいつも同じですが,半沢直樹シリーズとの繋がりが垣間見えたりして楽しくよむことができました。たまにはこういう本を読んで元気を出さないとダメだと思いました。