smc PENTAX 135mm F2.5 (Lens #047)

Asahi Opt. smc PENTAX 1:2.5 135mm
マウント:PK
焦点距離:135mm
開放F値:2.5
絞り羽根:8枚
レンズ構成:6群6枚
最短撮影距離:1.5m
フィルター径:58mm
質量:483g (実測値)

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遠い昔には,カメラを買うとたいていの場合,標準レンズがついてきて,その後,広角や望遠を買う,というのが普通でした。広角はどちらかというとマニアむけで,一般には50mm標準レンズの次は105mmか135mmを買う人が多かったようです。当時の135mm単焦点レンズはF3.5か,明るくてF2.8が普通で,F2.5は大口径レンズの部類でした。

しかし,望遠ズームレンズの焦点距離が70mmから200mmをカバーするようになったうえに,大口径の望遠ズームで開放F値が2.8のものが出現すると,中望遠の単焦点レンズはズームレンズに飲み込まれてしまいます。ズームレンズの開放F値と大きな違いがない135mmや200mmの単焦点レンズはあっという間に人気がなくなってしまいました。一方でポートレート用ということで中望遠の単焦点レンズは大口径の85mm F1.4に人気がでてきたようです。これにはYashikaがCarl Zeissと提携して出したContax Planar T* 85mm F1.4が人気を得たことと全く無関係ではないように思います。

旭光学の135mmはM42マウントのTakumar時代から大口径F2.5のレンズがラインナップされていました。M42からKマウントへ移行した際に,マウントだけ変えてTakumar時代のものが引き継がれて1975年にKマウント版135mm F2.5が登場しています。Kマウントのごく初期にはsuper multi coatedを意味するsmcを大文字で表記していたようで,135mmレンズの銘板にも「SMC PENTAX 1:2.5/135」と刻印されていました。これが前期型です。

その後,SMCをsmcと表記するようになって銘板の刻印も「smc PENTAX 1:2.5 135mm」となった後期型が1977年に登場します。SMCがsmcに変わっただけでなく,焦点距離の表記にmmがつくようになっています。光学系は前期型も後期型も6群6枚で,レンズ構成に変化はありません。各エレメント(レンズ)の形状は微妙に変わっているのかもしれませんが細かいことはわかりません。大口径中望遠レンズとはいえ公称で500gあり,かなり大柄なレンズです。

ズームレンズの台頭とともに135mmの人気がなくなっていったこととたぶん無関係ではないと思いますが,これ以降に旭光学から登場したMFの135mmレンズは同世代の初代KマウントのF3.5,smc PENTAX-MのF3.5,smc PENTAX-AのF2.8,そして,とてもレアで高価なsmc PENTAX-A*のF1.8です。MFレンズの時代の最後になぜか豪華な135mmが登場したのはどういう事情によるのかよくわかりませんが,同じような頃にミノルタがNew MD 135mm F2を登場させています。

話を元に戻すと,AF時代にはいると135mmの凋落ぶりがはっきりしてきて旭光学の135mmはsmc PENTAX-FAのF2.8が残るのみとなってしまいます。しかし,このレンズもいつのまにかカタログから落ちてしまいます。

手持ちの個体は銘板の刻印から後期型です。プラスチック製の純正フードがついています。このレンズをいつどこで入手したのかまったく記憶がありません。たぶん,1990年代の後半に東京出張のついでに中古カメラ店にぶらっと寄った際に,二束三文で売られていて思わず買ったのだろうと思います。実測で483gと公称値よりは少し軽いのですが,重いことに変わりはありません。ガラスの塊のような存在感は素晴らしいと思いますが,その重さゆえに入手してから一度も使った記憶がありません。しかし,存在感はあるので手元にこのレンズがあるという記憶は鮮明でした。最近,はじめて,それも今さらのようにフィルムをPENTAX LXに詰めて使ってみました。今のレンズのような解像感はもちろんなくて柔らかい画で,ちょっと懐かしい気分になりました。フィルムってこんな感じだったよな,と。デジタルで撮ったらどうなるのかはそのうち試してみたいと思っています。

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このレンズによる作例をこちらにおいています。よろしかったらご覧ください。

smc PENTAX-A 50mm F1.2 (Lens #046)

smc PENTAX-A 1:1.2 50mm
マウント:PKA
焦点距離:50mm
開放F値:1.2
絞り羽根:9枚
レンズ構成:6群7枚
最短撮影距離:0.45m
フィルター径:52mm
質量:345g (公称)

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旭光学は1975年に新しいKマウントのPENTAX KXなどを登場させます。このときに用意されたレンズのなかの多くはM42マウントのTakumarレンズのマウントをKマウントに変えただけのものでしたが,新たに設計されたレンズもいくつか登場しています。新しい光学系の超広角レンズである20mm F4や,大口径標準レンズの50mm F1.2などで,前者は良く写るとのことですがタマ数が少なく入手がやや難しいようです。後者ははじめてF1.2で50mmを実現したレンズだったようですが,こちらは比較的よくみかけます。

初代50mm F1.2の絞り羽は8枚,フィルタ枠は49mmでした。最初のKマウントレンズ群は比較的大柄なものが多く,小型軽量,というPENTAXのイメージとあわなかったのか,すぐにsmc PENTAX-Mシリーズのレンズに置き換えられます。しかし,50mm F1.2はMレンズの時代もモデルチェンジしないままでした。1984年になるとプログラムAEを含む自動露出に対応したPENTAX Super Aとともに自動絞りに対応したsmc PENTAX-Aレンズが登場します。Aレンズはマウントの物理形状はそれまでのKマウントから変更はされていませんが(というか,現時点でのデジタル一眼レフの最新モデルであるK-3 Mark IIIまで変更されていません),絞り情報を伝達するための電気接点が追加され,KAマウントとなります。

このとき,50mm F1.2もリニューアルされます。レンズ構成は前モデルを踏襲して6群7枚の拡張ウルトロン型ですが,レンズの曲率などは再設計されているようです。また,絞り羽は9枚になっています。フィルムの一眼レフカメラがAF化されてMFのAレンズが少しずつ整理されていく中で50mm F1.2だけは旭光学の一眼レフ用のもっとも明るいレンズとして生き延びます。2000年にはPENTAX LXの特別バージョンが発売されますがその際に標準レンズとしてシルバーの50mm F1.2がセットされます。シルバーの50mm F1.2は金属鏡筒でLimitedシリーズを彷彿とさせる意匠で高級感のあるものでした。

標準モデルの50mm F1.2はその後も生き続けます。デジタル一眼レフの時代に入ってもカタログに残っていましたが,2011年頃にカタログから消えたようです。27年にわたるロングセラーだったことになります。MFレンズなのでもちろんAFは使えませんが電気接点も絞り環もあるので,歴代のあらゆるKマウントカメラで使うことができるオールマイティなレンズです。F1.2で少し大柄ですが,最近の肥大化したレンズと比較すればむしろコンパクトと言ってもよいサイズです。PENTAX LXと50mm F1.2の組み合わせはPENTAXにおけるフラッグシップな組み合わせと言え,コンパクトなPENTAX LXとの組み合せはとてもよく似合っています。

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このレンズによる作例をこちらにおいています。よろしかったらご覧ください。

FE 20mm F1.8 G (Lens #045)

Sony FE 20mm F1.8 G (SEL20F18G)
マウント:Sony E
焦点距離:20mm
開放F値:1.8
絞り羽根:9枚
レンズ構成:12群14枚
最短撮影距離:0.18m
最大撮影倍率:0.22
フィルター径:67mm
質量:373g (カタログ値)

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Sonyの20mm単焦点レンズSEL20F18Gです。2020年3月の発売なのでこれを書いている時点ではまだ新しいレンズといえます。発売当初,結構話題になったように思います。当然のように新品ではとても買えないので中古の値段がこなれてくるのを待っていて,遅ればせながら入手した,という感じです。

最近では16mmスタートの超広角ズームがいくらでもあるので20mmくらいだとどうってことはない感じもありますが,私にとっては20mmは超広角レンズの代表的焦点距離です。しかも,普通はF2.8でしょ,って思っていたのですがこのレンズはF1.8です。明るくて寄れる超広角,軽くはないけど重くもなくて持ち歩くのが苦痛,ということはありません。このレンズはGレンズですが,無印の35mm F1.8 (SEL35F18F)といい感じの組み合わせで使えそうです。

超広角レンズなんてガッツリ絞って撮るもの,という思い込みがありましたが,このレンズは開放でもそこそこの解像感があるし,ボケも滑らかなので最短撮影距離が短いこともあってぐっと被写体に寄ってボケを取り入れた画作りもできますから表現の幅が広がります。また歪曲も抑えられていて(ひょっとするとカメラによる自動補正の効果が大きいのかもしれませんが),撮り方によっては超広角という感じがしない素直な写り方をします。さすがに現代のレンズで,古いレンズばかり使ったあとにこのFE 20mmに付け替えるとその違いに,当然のように愕然とします。写真がうまくなったんじゃないか,という錯覚をしてしまうほどです。

このようなレンズの性能をフルに活かす腕があるか,と言われればまるでないのが残念なところです。あまりにも普通に写ってしまって準広角レンズで撮ったんじゃないか,という画ばかりになってなんとなく敗けた感を持ってしまうのです。贅沢な話ですが。

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