マウント:SR
焦点距離:85mm
開放F値:1.7
絞り羽根:6枚
レンズ構成:5群6枚
最短撮影距離:1m
フィルター径:55mm
質量:454.69g (実測値)
1970年頃に最初のMC ROKKOR-PF 85mm F1.7が登場しています。金属ローレットでMC ROKKOR-PG 58mm F1.2 前期型-IIと同世代のものが最初のモデルのようです。ミノルタには微妙な1.7という開放F値のレンズがいくつかありますが,このレンズもそのひとつです。F1.8よりもちょっと明るい(ほとんど変わらないけど),というセールス的なことを考えていたのか,それとも,技術的ななんらかのこだわりがあったのでしょうか。
金属ローレットの85mm F1.7については,こちらに分解した様子が詳しく説明されています。
1978年にはMD ROKKORにバトンタッチします。MDタイプについてはこちらに分解した様子が示されています。MDタイプになってコーティングは少し変わったようですが,レンズ構成に大きな変更はなかったようです。しかし,MDタイプになってすぐに85mmレンズはf2の小型軽量タイプが登場したためにMD ROKKOR 85mm F1.7はかなり短命であったようです。MDタイプの方がMCタイプに比べてかなりレア度は高いと思われます。
レンズ構成は5群6枚のウルトロン型ですから,かの有名なC/YマウントのContax Planar T* 85mm F1.4と同じです。もちろん,レンズの構成が同じだからといって写り具合が同じになるわけもありません。でも,レンズ構成に共通点があるということでレンズ構成に特有の特徴は似ているかもしれません。だからどうだ,ということもないのですが。
重さは450gあまりで,58mm F1.2と同じくらいです。さすがに,どちらも大口径レンズだけあって贅沢なつくりであるためか,かなり重いレンズです。最近の高級レンズは見境なく大きく重くなっているので,1970年前後の高級レンズとはまったくスタンダードが異なります。しかし,それを差し引いてもこのレンズは十分に重く,ぎっちりとレンズが詰まっている,という感じがします(実際どうなのか,ということは別にして,イメージです)。
rokkorレンズはおしなべて不人気ですので,値段はあって無きが如しですが,58mm F1.2と並んで85mm F1.7は人気が高いため,相対的に高価です。この個体はローレットがゴム巻きになった後期型です。しかも,ROKKORレンズ特有のレンズ構成を示す2文字のアルファベットによる符号が省略されて以降の個体です。レンズの世代の違いはほとんど相場には影響がないようですが,58mm F1.2は金属ローレットの前期型を所有しているので気分をかえてゴム巻きローレットのタイプを入手しました。ヤフオク!で高くも安くもないほどほどの値段で落札しました。
上の写真に見られるように,専用のねじ込み式のフードがあったようで,minoltaの文字がレトロ感満載です。コーポレートアイデンティティなる言葉が流行ったバブル末期に多くの会社がロゴマークを作ったり変えたりしましたが,ご多聞に漏れずミノルタもこの時期に新しいロゴマークを作っています。個人的には,上の写真のフードに見られる古風なminoltaというレタリングのほうが新しく作られたチャラチャラしたロゴマークよりずっと好きです。だいたい,ロゴマークに何かの意味を持たせてそれをいちいち説明するのって何か馬鹿馬鹿しい気がします。説明しなければ何を表しているかわからないのであれば,全く意味がないからです。それなら気の利いたレタリングだけで十分です。
話がそれますが,ファッションで著名なYves Saint Laurent (YSL)のロゴは1963年にAdolphe Mouron Cassandreによってデザインされたものですが,言ってみればYves Saint Laurentというデザイナーの名前のレタリングにすぎません。でも,このレタリングはとても素敵ですし,Yves Saint Laurentというブランドイメージと直結しています。チャラいロゴマークよりも伝統あるレタリングの方がずっと雄弁だ,と思うのです。これもだからどうだ,という話はありませんが,minoltaの1970年頃のレタリングは今見ても十分に格好よかったと思うのです。
このレンズによる作例をこちらにおいています。よろしかったらご覧ください。