AI vs. 教科書が読めない子どもたち

新井紀子の「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」を読みました。

丸の内OAZOの丸善にたまたま行ったら,平積みで大量に売られていたので思わず手にとってさっと斜め読みをして速攻で買いました。前半のAIの話は深層学習の数学的な意味を考えれば普通にわかるような話で特に新しい情報が得られるようなものでもありませんが,普通の人にはそれなりに新鮮なのかもしれません。それよりも後半の子供達の読解力に関する調査結果が非常に興味深いものでした。

職場で日頃感じていた話の通じなさを調査によってきちんと裏付けされたということが私にとっては大きな意味をもって感じられました。実感として言葉を使ったコミュニケーションができなくなっていました。ごく簡単な単語の意味はわかっているようでも,文章としてつなぎ合わされたものの意味が全く伝わっていない,ということがこの1, 2年で,強く感じられていたのです。意味が伝わらないので,いろいろと違う言葉や表現で説明をしなおすと,全て別々の意味として受け取られていて同じことを説明しているということがわかってもらえず,その結果,ますます混乱していました。この本で言うところの「同義文判定」がまったくできていないのです。もちろん,具体例同定や推論もまったくダメですから,まさに,「教科書が読めない」大学院生そのものです。

これは,ごくごく稀な特別な例だと信じたかったのですが,その一方で目の前にそのような人が存在するということはかなり高い割合で同じような人がいる,ということも経験的にわかっていましたからかなり状況は深刻だろうと予想していました。だって,宝くじでも年賀状のくじであっても最低の賞が当たった人は周りにいくらでもいますが,1等賞が当たった人はいまだかつて見たことがありません。普通に目の前に現れる事象は年賀状の最低の賞と同じくらいの3割前後より多いものに限られるというのが私の経験則です。

この本の著者の調査によれば中学生の半分くらいはほとんどまともに教科書が読めない,ということを示しています。したがって,ごく普通に目の前に「教科書が読めない」大学院生がいても不思議はない,ということです。少なくとも,調査を行なった2016年よりも前にはそんな子供が一人もいなかった,ということはあり得ませんから,少なめに見積もっても3割はまともに教科書が読めない大学院生がいてもなんの不思議もありません。

見たくないと思っていた現実を調査に基づいて明確に示されたことは私の予想が正しかったことを示している,という点でよいのですが,社会としてはかつてないレベルでどうしようもないほど危機的な状況にある,ということを意味しています。教育の現場では,わからなかったら教科書を読んでおけ,という指示はまさに禁句になるのです。読めばわかることを前提としている教育でこれはもうどうしようもありません。

実際,マニュアルのような単純明快な文章を読んでもそのとおり操作できない(そのため,プリンタのトナーを正しく交換することさえもできず,トナーをそこら中に平気でばらまくのです),ということが普通です。ましてや教科書なんて読めるはずがありません。それが,大学院生ともなれば,もっと不親切な表現の論文や専門書を読んで自分で理解しなくてはならないのです。

日本の未来はまさに真っ暗です。小学校で英語やプログラミングなんてやっている場合ではありません。当たり前の日本語を読めるようにしなくてはなりません。藤原正彦の「祖国とは国語」にもなにはともあれ国語が重要ということがくどいほど書かれていましたが,私もまったくその通りだと思っています。

読解力の危機を訴えているのが新井紀子にしても藤原正彦にしても数学者である,ということも興味深いですが,数学は論理的な文章の理解が要求されるため,より切実な問題としていち早く問題点が認識されやすいのでしょう。

まずは読解力を維持することこそが重要な教育目標であることは間違いないと思います。

macOS High Sierraのssh

遅ればせながらようやく新たに調達したMacBook Proを使えるようになったので,出張へ持って行って実戦投入しました。

特急ひたち5号にのって,さぁ,仕事をしようと思って職場のサーバーにsshで接続をしようとしたら
Unable to negotiate with XXX.XXX.XXX.XXX port 22: no matching host key type found. Their offer: ssh-dss
といわれて接続ができませんでした(XXX...はリモートサーバーのIPアドレス)。

調べてみると,どうやらリモート側のsshdが古いということのようです。
-oHostKeyAlgorithms=+ssh-dss
というオプションをつければよい,ということで,

ssh -oHostKeyAlgorithms=+ssh-dss XXX.XXX.XXX.XXX

とやればちゃんと接続できました。

こんなに長いオプションを毎回叩いてられないので,.cshrcに

alias ssh ssh -oHostKeyAlgorithms=+ssh-dss

を追加しておきました。このようにしておけば,普通に

ssh XXX.XXX.XXX.XXX

とやれば接続できます。最近の新しい技術についていけてない,というのがよくわかる情けない話でした。

Mac OS X 10.13 High Sierra (その5: Wordのエラー編)

職場のサイトライセンスに従ってMacBook ProにMicrosoftのOffice 2016 for Macをインストールしたのですが,wordの起動時になぜか「非表示モジュール Link 内でコンパイルエラー発生しました。」というわけのわからんエラーがでます。OKを押せば作業を続けることができるので特に不都合がないといえばないのですが,毎回,エラーが表示されるのは鬱陶しいものです。

Office 2016に関する情報はあまり見つからず,ここに書かれている方法を試してみました。

書かれている通りなのですが,

/UserNAME/Library/Group Containers/UBF8T346G9.Office/ユーザーコンテンツ/Startup/Word/linkCreation.dotm

を消せばよいようです。UserNAMEは自分のアカウント名です。また,普通にファインダーで自分のホームディレクトリを開いてもLibraryというフォルダは見えません。面倒なので,iTerm2を起動して,ホームディレクトリで

open Library/

と叩けばライブラリフォルダの中身をfinderが表示してくれます。iTerm2では文字コードをEUCに設定しているためMac上の日本語のファイル名が文字化けする,という別のワナにはまってしまいますので,iTerm2だけを使ってコマンドラインから目的のディレクトリにたどり着くことができません。というわけで,無意味にコマンドラインとfinderの合わせ技で処理します。

いずれにしても上記ファイルを削除したらエラーも表示されなくなりました。これってなんなんでしょう...