最近は,職場でもいろいろとトラブルが多いのですが,そのとき,トラブルの中心となっている人物をカウンセラーに紹介していろいろ話を聞いてもらいますが,家族との関係を聞くとびっくりするようなことが少なくありません。どうであればOKである,という基準があるわけではもちろんありませんし,それぞれの個別の事情で家族の形態は形作られるものだと思います。しかし,それにしてもそれはいくらなんでも普通はあり得ない,と思うようなことが常態である場合,どこかに歪みが生じることは十分に考えられます。
しかし,この本にあるような事態が少なからずおこっていて,それが著者が言うところの「大衆化」しているとすれば,職場でこれに類する経験をするのもそれほど特別ではないのかもしれない,とも思いました。著者は,親が子と真剣に向き合うことが少なく,その結果として子供が長じて問題行動に至るのではないか,ということを暗に述べているように思います。実際,親子関係だけでなく,職場での人間関係でもきれいごとばかりを優先して,面倒事からは目をそらしてなかったかのように振る舞う「偉い人」はたくさんいます。面倒事とは向き合わずにすませられるならそれはとてもラクですが,そのツケは必ずどこかについて,より高い代償を払う事になっているのではないでしょうか。
この本に書かれている内容は精神疾患に関する部分を取り扱っていますが,日本の社会全体のある種の縮図のようなものではないか,と思いました。

「子供を殺してください」という親たち (新潮文庫) -